未来へのボール*FALL*
彼女は足を止めようとしない。
あたしを、どこに連れていくつもり?
「秘密…?」
彼女はそう言って、
スタスタと歩き続ける。
いや、スタスタじゃなかったな。
《バシャッバシャッ》
雨のせいで、足までずぶ濡れ。
「……ね、"あなた"じゃ呼びづらい。
名前教えてよ。」
「……な、まえ…?」
「うん。」
何で名前なんて聞きたがる?
あたしとあなたは無関係じゃない。
名前を聞くなんて、まるで
これから関係を持つみたいじゃない。
「……つばき。」
何故か無償に教えたくなくて、
名前ではなく名字を教えた。
「…つばき、か。
木と春を書くヤツだよね?」
「……うん。」
何となく、綾芽よりも、
椿の方が良いなぁと思った。
椿が、名前だったら良かったのに。