未来へのボール*FALL*
Ⅵ 過去の1ピース
〔side綾芽〕
温かい。
心地いい。
ここは、どこなの?
「―――…。」
うっすら目を開ける。
良い匂いのする部屋。
………本気でここどこ。
《ガチャッ》
「あ、起きた。」
ドアが開いたと思えば、
ひょこっとラルが顔を覗かせた。
「え、マジで!?」
その後ろからライ…君も。
「大丈夫かよ、つばきぃ。
急に倒れたからびくった。」
「え、あ…。」
ここまで運んでくれたんだろうか。
ものすごく申し訳ない。
「良いよつばき。
気にしないで。ライだし。」
「はぁっ!?ちょっ、おま、ラルッ!?
俺の扱い酷くねえか!?」
「日常茶飯事。
つばき。体は?平気?」
"つばき"。そう呼ばれても
いまいちしっくりこない。
この時、何故か悲しくなった。
言わなきゃ。そう思った。
あたしの名前を。言わなきゃ。
呼んで、ほしいと思った。