彼は人魚姫!
「オーナーって、なんか…意外と可愛いですね」


そう言ってしまった後で、ちょっと後悔した。年上に、それも上司に言うセリフではなかった。
失礼だよね。『可愛い』なんて。
なんとかここはスルーして下さい…。
心の中で手を合わせてお願いする。


「可愛い?そんな事、初めて言われた。えっ?ほんとに可愛い?」


えっ?そこ?そこに食い付く?
この人、見かけによらず案外面白い人かも。
なんか心地いい。


「可愛いですよ。あたしが男だったら絶対、ホレてます」


「それって女装が似合いそうって事?それは無理。マズイよ。そんな趣味ないから」


ちょっと下を向いて恥ずかしそうに笑う。
この間とのギャップがすごくて。
ほんと抱きしめたくなる。
小動物みたいに可愛いとこある。
んだけど…。
何?どうしたの?ふと、空を見上げた横顔が、さっきまでと違って見える。
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