彼は人魚姫!
『しぃ………』


なんだろう。
胸騒ぎが止まらない。
どうか気のせいでありますように。
綺麗な海の色をそのまま映したかのような青い空をふと見上げた。


「え?」


なんか声が聞こえる。
話し声?しぃ?いたの?
店の裏の方からかすかに声が聞こえて来る。
しぃ?誰かといるの?また告られてる?
焦る気持ちが一気に嬉しさに変わって行く。
あと3歩ほどで角を曲がる…。
『しぃ…』


「…何?」


体が固まった。
鼓動さえも止まったかのように感じた。


「だからぁ、待てって。誕生日まで、まだ日があるだろ。ガタガタ言うな。…当たり前だろ?僕の事、誰だと思ってるんだ?女なんて簡単に堕とせる。しかも僕好みの可愛いコを見つけた。…素性?そんなのどうでもいいだろ。要は誕生日までに結婚すればいいだけだろ?そうすれば僕は晴れて自由の身………」


「あっ」


思わず後退りして小石を踏んずけてよろけた瞬間、声が出てしまった。
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