彼は人魚姫!
『ヤバイ…』
来られる。来るよ。来る!
飛び出しそうな心臓。
パニックになる頭。
動かない体………。


「何してんの?ママ」


一瞬、睨み付けたように見えたのはきっと気のせい。
でも、いつもの笑顔に冷酷さを感じた。
その笑みの下に何を隠してるの?
あたしを裏切ってる?
違う。今の話にあたしは関係ナイ。
違う。違う。違う。


「触らないで!」


抱き起こそうとした、しぃの手を強く払ってよろけながら立ち上がった。
しぃの顔、見たくない。


「ママ、聞いてた?」


体に強い電流が走る。
もうダメだ。あたしの中で大切なものが崩れる確証が生まれる。
体が震え始める。


「誰と話してたの?なんで携帯持ってるの?」


「ひとりごとだよ。気のせいだよ」


あたしだってそう思いたい。
差し出すその手を掴みたい。
信じたい。けど。
そこまでバカになれない。
しぃ…。


「ふざけないで。ごまかさないで!」
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