彼は人魚姫!
「バ、バカ!」


顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。
しぃに何かを見透かされたようで心臓がドクンと強く打った。
バカな妄想をオーナーに気付かれないように、横を向いて出来るだけ顔を隠す



「あの、ほんとに大丈夫です。ありがとうございました」


急いで言うと、オーナーの顔を見ずに腕から降りた。


「ふぅ~ん。そういう事?」


腕組みをしてこちらを見ていた秋穂が意味深に微笑む。
何か分かったかのようだけど、何が?
何が言いたいんだろ?


「何が、ですか?」


つい、食ってかかってしまった。


「いいのよ。いいの。その方がいいの。ねっ、風、もう帰りましょうよ。気が済んだんじゃない?」


いつの間にか、秋穂はしぃの腕を掴んでいる。
いや、絡めていると言った方が当てはまるかもしれない。
しぃはあの腕をどうするんだろ?受け入れる?
なんて、つまんない事をこのわずかな時間に考えてる。
そんな事はどうでもいい。
もっと、ちゃんと成り行きを知りたい。


「あ……」


しぃがさりげなく秋穂の腕を外した。
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