彼は人魚姫!
「僕は逃げた。家を継ぐのが嫌だった。海堂グループを継ぐ事が、どれだけ大変かぐらいは僕でも分かる。だから拒否した。でもそれで済むはずもなく。 父親は凪と僕の二人に継がせたいんだ。凪一人じゃ、確かにもっと大変なのは分かる。でも、僕は嫌なんだ。やりたい事がある。それをやれるなら全部捨てていいと思った。財産も地位も何もいらない。身一つで家を出してくれって。でもそれすら叶わない。自分はそんながんじがらめの世界にいるんだ。改めて気付いた。みんなが持ってる『自由』を持ってない。出された条件は一つ。誕生日までに僕を心から愛してくれている人を連れて来る事。心から愛してくれている人を。そんな人に巡り合う事が出来たなら、家を出る事を認めるって。その為に、ママには僕の素性を知られたくなかった。ママは海堂グループという看板に心を動かされるような人じゃないけど、でも、変な先入観を持たれたくなかった。逃げられたくもなかった。僕は本気だから。ママが好きだから。ママじゃなきゃダメだから。これからの人生、一緒に歩きたいって思う。隣で笑ってて欲しい。ママの笑顔をずっと見ていたい。心からそう思う。今は、今は、家がどうとかそんな事、関係なくママが欲しい。ずっと、全部。僕だけの雫になって。愛してる」
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