彼は人魚姫!
言ってる意味は分かった。
要は家を継ぎたくないんだ。
その為に父親に出された条件を満たそうとしている。
あたしの事を本気だって言うけど、そんなのどこまで信じられる?
利用されてポイじゃないの?
大体、そんなセレブな一族があたしを認めてくれる訳もない。
どのみち、しぃは継がされる。
心から愛してくれる人って、どうやって証明するの?
それもあやふや。
しぃは間違いなく、父親に少し時間の猶予をもらっただけ。
そんな事も気付いてないの?


「あ……、あの……」


「少し待つ。居場所がバレたし、もうここに長くはいられない。明日、明日返事して」


「明日?」


「僕さ、あの日、わざとママをあそこで待ってた。死んだふりして。ママが来る事は分かってた」


『わざと?』声がひっくり返るあたしに、しぃは優しく笑いながら話を続ける。


「中学校の入学式の日、どこかの車に泥をかけられなかった?」
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