彼は人魚姫!
「え?何?ちょっと待って。どういう事?」


聞きながら記憶を必死に遡る。
入学式って……、晴れてたような?
傘なんて差した記憶がないけど。
ん?晴れてたのは高校の入学式?
中学校は雨だった?


「覚えてないの?やっぱりバカ?」


しぃはクククッと笑ってチラッとあたしを見る。
そして急に悲しい顔をした。


「ママ、前日に降ってて水溜まりが出来る事もあるよ」


そんなに憐れむような目で見ないでって。
それくらい分かってるし。
中学校……中学校でしょ?泥、あ!そうだ!
かけられた!


「思い出した!そうよ!あの時、大変だったんだからね!スカートやブレザーにいっぱい泥がついて。あたし、泣いたんだから。必死にウェットティッシュで拭いて。初めて制服を着た日にあれだもん。しかも入学式だよ?あの後、拭いて濡れたシミだらけの制服で式に出たんだから。分かる?新しい出会いに胸を膨らませてたあたしのピュアな心も傷付けたんだからね!そうか。しぃが乗ってたのね。責任取ってよね?」


記憶と共に怒りも思い出したあたしは、気付けばしぃの顔の近くに接近していた。
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