彼は人魚姫!
「残念だけど、続きは後でね」


『え?』と言うボケたあたしの顔に、またググッとカッコイイ顔を近付ける。
体内の血が一気に沸騰した気がした。


「愛してる。ずっと前から」


そう言い残して、しぃは先に出て行った。
『ずっと前から』
ふぅん。そうなんだ。ん?ん?んんん?
またよく分からない事言って。
ほんとに記憶喪失なんじゃないの?
『ふぅ……』小さくため息をつく。
胸の奥の方でまだ何か小さな塊が引っ掛かってる感じがする。
大きく息を吸って、『ふぅ~~』と吐いた。
でも、何も変わらない。
きっとそんな事じゃないんだ。
分かってるけど。
『あっ』
もう準備をしないと間に合わない。
でも、とてもやる気にならない。しぃも戻って来てくれるか分からないし。
お互いそれどころでもない。


「臨時休業だな」


あたしもゆっくり席を立った。
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