彼は人魚姫!
「あ…いいえ。こちらこそお役に立てず、すみません」


どうしよう…。
すぐバレる嘘ついて。
『あのカフェにいる』って誰かがはっきり言えばおしまい。
そのカフェの店長はあたしだし。
あぁ、もう。何で嘘ついた?
それは………


しぃが連れ戻されると咄嗟に思ったからだ。
記憶が戻ってなくても関係ない。
家族や友達が迎えに来たら、そこまで。
しぃは帰ってしまう。


ん?
帰っていいんじゃないの?
え?
あたし、何を思ってる?


あの瞬間、しぃが帰るのがイヤだと思った。
『離れたくない』から。
いや、『離さない』の方が、より心に近い。
これは本心?
何だか胸がドキドキして来た。


「もし…、もし、この人を見かけたら。こちらにお電話して頂けませんか?」


女性が手渡してくれた名刺には、
『Blue Rose Company 代表取締役 美郷 秋穂』と、あった。
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