彼は人魚姫!
「待っててくれたの?ママ」


「うわぁ!」


後ろから急に抱きしめられて、思わず大きな声が出る。
と同時に、あたしは瞬時に秋穂の姿を探す。


「見つかったらどうすんのよ」


もちろん、あたしを『ママ』なんて呼ぶのはアイツしかいない。
振りほどいた腕の、細いけどしっかり固い筋肉は、しぃだ。


「見つかるって何の事?ママ、追われてるの?何やったの?」


「あのねぇ、あたしがそんな風に見える?ほら…あの…、しぃのファンの事よ」


1番楽な言い訳がすぐに見つかった。
怪しまれる事もない。


「あぁ。そっかぁ。ママ、やっぱり僕の事、心配してくれてるんだ。嬉しいな」


「うわぁ」


コイツは外国人か?
いちいち抱きつかなくていいし。
あっ、もしかして、しぃって帰国子女?
海外生活が長いなら、こういう態度も理解出来る。
もしかしてちょっとズレてるおぼっちゃまか?
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