彼は人魚姫!

淡いブルーのカーペットが敷かれた四畳半の和室。
部屋の左側に白い三段ボックスと32型のテレビ、真ん中に小さな白いテーブル。
三段ボックスはあたしがしぃの為に最近買って来た。
着替えや何かを入れる物がいるだろうなぁって思って。
右側を見ると、布団がバサッと半分に畳んである。
いつから畳むようになったんだ?
まぁ、正確にはこれを畳むとは言わないだろうけど。
あたしはテーブルにサンドイッチを置くとゆっくりと座った。


顔色が悪いのは…誰のせい?
長年恋愛とは縁遠かったあたしには、二人の男性からのほぼ同時プロポーズは胃に穴が開きそうなほど悩む事案。
そろそろ薫には答えを出さなければならない。
薫が仕事でしばらく留守にしているのをいい事に、頭の隅っこに追いやっていた。
面倒な事から逃げたいタイプなんだろうな。あたしって。
良くない。


「美味しい…」


一口、つまんだサンドイッチはキュウリのシャキッとした歯応えとハムの旨味、そして何より塩加減がちょうど良く、あたしの食欲をそそって行く。
『お店に出せるかも』なんてちょっと思ったりして。
あっ、また無意識に違う事を考えようとしてる。
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