新撰組刹那綴-霞草-
取り敢えず腰かけてから私は
口を開いた。
「私は
磯部 珠稀(イソベ タマキ)といいます。
この記事にある
大火に見舞われた民家というのは
私の祖父の家です」
「なるほど、お前さんの縁者か……」
「盗みをはたらきだしたのは
祖父が死んでからです。
一人になって、頼る者もないので
仕方なく……」
「へぇ、そういう訳かい」
「祖父は火の元に関しては
人一倍厳しい人でした。
だから今回の事故は
祖父の不注意で起こったことだとは
考えにくいんです。
だから私、真実が知りたいんです!」
「えぇ?でもたまたまってことも
あるんじゃねっスか?」
「それはねぇな」
「はれ?土方さん?どして……」
「女。その記事もう一度見せてみろ」
「……はい」
ずい、と記事を前に出すと
わらわらと隊士達が寄ってきた。