新撰組刹那綴-霞草-
沖田はむくれて
来た道を戻って行ってしまった。
「ははっ。やっぱり総司や平助は
いじると面白いなァ」
「悪趣味ですよ」
「自覚してるさ。
ささっ、飯食いに行こうぜ。
明日っから嬢ちゃんも
手伝ってくれよ?」
「はい」
私が返事をすると
原田さんは私の顔を
のぞきこんできた。
「な、なんです……っ」
「いや?まぁわからなくもねぇが
嬢ちゃんってムスッとしてる時が
多いよなァ?」
言われてみればそうかもしれない。
爺が死んでから
私は声を上げて笑ったことがない。
「俺、嬢ちゃんの笑った顔
見てみてぇよ」
「!?」
きっと別嬪だろうな~
なんて言いながら原田さんは
廊下をどすどすと歩いていく。
私は驚きつつ、後についていく。
こんな場所で
私が笑える日なんて
くるんだろうか?