未来へのボール*WINTER*

「……。」

あたしが触れたのは、先輩の頬。


スベスベしてそうな頬だったけど、

そんなことが確認出来るほど

触っていられなかった。


触れて、すぐに手を引っ込めたんだ。


「………ごめんなさい。」

サクト先輩の寝顔と向き合って、

初めに出てきた言葉は謝罪だった。


「……中途半端で、ごめんなさい。」

原因は、自分の不甲斐なさ。


あたしはバスケに向き合おうとした。

マネージャーとして。


「……ごめんなさい。」

けど、気付いたら自分の中にある

罪悪感に押し潰されそうで…

結局諦めてしまった。


「…………弱くて…ごめんなさい…。」

折角…あなたが

あたしの背中を押してくれたのに。


「………。」

そして。


「……ごめんなさい……。」

こんなあたしなのに…あたしは

あなたを好きになってしまった。


……そしてまだ…今も変わらない想い。

きっと、変わることは無いのだろう。


「…ごめんなさい。」

好きで、好きで。

けど、あたしは弱くて。


………なのに、消せなくて。


「……。」

……せめて最後に1度だけ。

謝罪じゃなくて、

感謝の言葉を述べたかった。


……そう思ってたのに。


「………。」

…言葉は、出なかった。


何故、声が出なかったのか…。

自分では、分からなかった。


「……。」

沈黙が続く中、

あたしはただ1人立ち尽くす。




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