未来へのボール*WINTER*
「…………ら…ラル…。」
俺は、ラルの顔を見た瞬間。
思わず絶句した。
「………っ。」
ラルの瞳には…何も映っていなかった。
真っ暗な、闇の底のような色をして、
ただ目の前の光景を反射させる
ガラス玉と同じようだった。
「…………罪…。
あたし…あたし…、は…。」
どんどん、どんどん沈んでいく瞳。
「………………ラル…っ。」
怖い。単純にそう思った。
ラルが、今にも消えてしまいそうで。
ラルが、もう俺を目に映していなくて。
どんどん、瞳から光が無くなって。
このままじゃ、危ない。
ラルが、ラルでなくなってしまう。
俺の知っている、皆の知っている
"橘羅琉"が、居なくなってしまう。
「ラル…。」
「……………。」
全てを失ったような顔をしているラル。
そんな顔をしないでほしい。
喜びでも、怒りでも良いから、
他の表情をしてほしい。
「…………1人…に、してくれますか…。」