未来へのボール*WINTER*

「……俺はさ、

お前を追い詰めたいワケじゃない。」

先輩の真っ直ぐな瞳を見ていられなくて

あたしは先輩に腕を掴まれたまま

床に視線を落とした。


「俺は、お前が好きだ。」


「……。」

もう3度目だ、その言葉。

その、夢の様な言葉。


夢の様な言葉なのに

素直に受け取れないのは

あたしが…逃げてるから。


「だから、お前が迷うことがあれば

導いてやりたいんだ。」


『どうしようもない時は、

俺が手を貸すから。』

……あの時の、言葉。


「…前も言ったんだけどな。

同じ様なこと。

まぁ、覚えてないだろうけど。」


「…っ、覚えてま…っ…。」

……しまった。


「…、覚えてる?」

……言わなければよかった。


「……、ラルは、さ。

一体何から逃げてるんだよ。」


「……べ、つに…。」

逃げてなんか無い…なんて、

今ここで言ったところで

全く意味を成さないだろう。


"何から"…か。



< 91 / 130 >

この作品をシェア

pagetop