未来へのボール*WINTER*
「…怖いことは、あります。」
「…何。」
「…あたし……あたし、は。
もう何も、失いたくない。」
そう。
「失うくらいなら、
初めから無い方が良い。」
そうだよ。
「あたしはもう、"大切なモノ"を
増やしたく無いんです。」
《バシッ》
ようやく、サクト先輩の腕が離れた。
「ハァッ……ハァッ……ッ…。」
「…。」
サクト先輩の真っ黒な目を見た。
好き。
好きです。
大好きなんです。
けど。
どうせあなたも何処か
遠くに行ってしまうんでしょう?
あたしを……
置いてけぼりにするんでしょう?
そんなの。
耐えられる自信が無い。
「置いてけぼりは…、もういや…。」
寂しい。
哀しい。
苦しい。
「…1人は、いや…。」
怖い。