悪魔は人に依存する
人は悪魔に依存する
(一)
「ワタクシ、紅茶よりもコーヒー派なのよん」
そう言って、シキミが淹れた紅茶を返す男は無礼でしかなかった。
客人としてもてなさなければならないのは、招いた側であるシキミにしても、淹れたものを突きっ返すのはマナー違反もいいところ。
それほどの仲でもないし、いっそ、何も出さずにお引き取り願おうかともシキミは思った。
「なら、早々におかえりを。どうぞ、あなたの欲しがっていたものです」
此度、この男が来たのは、シキミから受け取る物があったからだ。
シキミが差し出してきたものに対して、男の目の色が変わる。
「ああー、ワタクシのルビーんっ!」
我が子との再会よろしく、受け取ったルビーに頬擦りをする男。よほど大切なのは見て分かるが。