悪魔は人に依存する
「くっ……」
アガトの行く手先々で待ち構える舌は制限なしに伸びる。
獲物を逃さぬ柵役のものと、獲物を追い回す狼役のもの。囲われた羊は為すすべもなく捕まるしかなかった。
「ぎゃーっ、ダンナあああぁ!」
決死迫るインプの断末魔。身体中を舌で舐め回され、口に運ばれていく。
アガトとてそれは同じ。
「こ、のっ」
ベタベタと吟味する舌が、服の中にまで入ってきた。
張り付く舌の表面。デウムスの味蕾(みらい)に叶った味であったか、入念に舐め回される。
2mmほどの細かな突起物がざらざらしつつも、粘膜がべっとりと吸盤のようにアガトを離さない。
蛇にとぐろ巻かれるよりも最悪だ。踊り食いだなんて言葉が浮かぶ。