悪魔は人に依存する
石床に彫られた紋様を踏みしめながら、自分は召喚されたのだと知る。
「還せ。俺の契約者は、既にいるのだから」
言いながら、ふと、契約者がいる召喚物を、他の召喚師が呼び出せるのかと気になった。
聞いたことがないが、聞いたこともない。他人の所有物を勝手に持ち出せる真似など、容易にできるものなのか。
「ごめんよん。いやぁ、ワタクシ、スペシャルだから、たまーに他所さまの召喚物呼び出しちゃうのよん」
自称スペシャルな奴らしく、胡散臭い笑みを浮かべた男だった。
「でも、びっくりん。なんでかなあん。ワタクシ、デウムス呼んだつもりなんだけどん」
「あの巨体の契約者か」
「いやいやいやん。そのデウムスがさ、いい宝石持ってるって、噂で聞いてねん。これは、その宝石だけ貰おうかとの召喚なのよん」