瞳の住人
ボクがとってもツヤがいいのは、いつもショウコちゃんがお手入れをしてくれているからなんだ。

いつもは人間用のシャンプーを使うんだけど、先週、ショウコちゃんが奮発して、犬用のシャンプーを買ってくれた。けれどそれがピンク色でとてもいい匂いがしたので、つい食べてしまった。

その現場をショウコちゃんが見ていて、すぐに病院につれていかれて、ボクはなんともなかったのにニガイ薬を飲まされた。

「さすが動物用のシャンプーだな。食べてもなんともないのか」とショウコちゃんのお父さんは笑っていた。ボクもそう思う。だってボクはとっても丈夫なんだもの。

けれど翌日のフンは鮮やかなピンク色をしていて、驚いたけれどショウコちゃんが心配するといけないから前の家の庭になげいれておいたんだ。

こういうときは人間の言葉が話せないほうが「ワン」でごまかすことができるのかもしれない。

ショウコちゃんはとがめるような、半分からかっているような顔をしていた。

「まあ、口がきけてもきけなくてもトニーはトニーなんだし、しゃべれるほうがエサの好みもすぐにわかるし、楽しいよね。でも、お父さんとお母さんはどうしよう」

「しばらく黙っておいたほうがいいと思うんだ、腰とかぬかされたらこまるし。それにボクもいつまで人間の言葉が話せるのかわからないし」

「薬がきれるってこと?」

ボクはうなずいた。


< 9 / 9 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop