音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに

ダンスホールにオーケストラの心地よい三拍子の音楽が流れると、ジェイドはエミリアの腰を軽く引き寄せ、巧みなリードでワルツのステップを踏み始める。

華麗にターンをする度に、エミリアの瞳と同じ色の美しい緑色のドレスがひらひらと揺れた。

最初は不満顔で二人を見つめていた令嬢達も、あまりに優雅なダンスに、今は溜め息をこぼす程見惚れている。

周囲の注目を浴びていることなど全く気にもせず、涼しい顔で踊り続けているジェイドを、エミリアも熱のこもった瞳で見上げていた。

オーケストラの演奏が緩やかに鳴り止みワルツを一曲踊り終えると、ジェイドは胸に手を当てお辞儀をし、エミリアもドレスの裾をふわりと少し持ち上げてお辞儀を返す。

「素晴らしい！」
「なんて素敵なの！」

二人に送られる惜しみない拍手と賛辞の言葉が飛び交う中で、ジェイドは再びエミリアの手を取りダンスホールを後にした。

「ジェイド様と踊ることができるなんて…とても幸せな時間を過ごせました」

「ありがとう、光栄だよ。
私も久々に踊ったが楽しむことができた。
君はダンスが上手なんだな」

「そんな…ジェイド様のリードのお陰です」