音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
アダム・エドワーズの演奏は素晴らしかった。

白と黒の鍵盤を指先が滑らかに動き、大広間に美しいピアノの旋律が響き渡る。

高音と低音が同時に鳴り響く壮大なその音色は、まるで平和を祈る聖なる教会の鐘の音のようだった。

祈りを捧げるような幻想的な雰囲気に包まれ、そこにいる者全てを魅了していく。

最後の音の余韻まで大切に響かせると、ゆっくりと手を下ろし、アダム・エドワーズは立ち上がり聴衆に深く礼をした。

興奮したようにハワードが立ち上がり拍手で讃えると、そこから広がる波のように大広間は拍手の渦に包まれた。

演奏者が舞台を退場した後も、拍手喝采だった大広間は興奮冷めやらぬ喧騒に包まれている。

その熱気に満ちた空間から逃れるように、ジェイドとエミリアは大広間から続くバルコニーに佇んでいた。

心地良い風が吹き抜け、少し火照っていた身体を冷ましていく。

「素晴らしかったですね。
本当に綺麗な響きでした…」

「あぁ、彼は才能溢れる素晴らしいピアニストだと思うよ」

「私もすっかりあの方のファンになってしまいました」

「確かに今日の演奏で、君のような女性ファンはまたさらに増えたようだ」

「それは…あれ程美しい容姿をなさっているんですもの。
女性達が騒ぐのもわかります」

エミリアはからかわれたような気がして、恥ずかしそうに俯いた。
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