音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
「人は皆美しいものに魅了されるものだ。
わからなくはないな、それが芸術だろうと自然だろうと人であろうと」

ジェイドが同意してくれたことに安心したエミリアは、満月の光を浴びて幻想的な美しさを放つジェイドの横顔を見つめながら、無意識に手を合わせ握り締めていた。

「それは…たとえば、ジェイド様にも美しいと思う女性がいらっしゃるということでしょうか?」

小さく呟くような思いがけないエミリアの言葉に、ジェイドは少し首を傾げた。

突然の質問に無表情で沈黙するジェイドの様子に、エミリアは勢いで大胆なことを聞いてしまったかもしれないと頬を染め慌てている。

「すみませんっ…突然こんなことをお聞きして…」

「…いや、構わない」

気を悪くしたかもしれないと思ったジェイドの穏やかな声を聞き、エミリアはほっと息を吐き出す。

「さっきも言ったように、私だって美しいものは美しいと感じるよ。
それとも、そんな感情は持ち合わせていない冷徹な人間に見えるかな」

「そっ、そんなことありません!」

思ってもいないことを尋ねられ、エミリアは咄嗟に叫んでいた。

そしてすぐに大声を出すなど、はしたないことをしてしまったと両手を口に添え、隠すようにしながら肩をすくめ、さらに頬を染める。
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