音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
おそらく誰も知らない真実を、ジェイドはひとり抱えていた。

誰に話すこともせず、今まで考えないようにして逃げてきたこと。

オスティア王国の王子として、国を統べる国王になる者として、懸命に生きてきたはずだった。

その全てを否定されたような真実を知ってしまったあの時、ジェイドの心に初めて迷いが生まれたのだ。

オスティア王国にとっても、深刻かつ重大である問題。

考えれば考えるほど迷い込む迷路のように、どんなに思考を巡らせても、いつも出口は見つからない。

憂鬱そうに表情をかげらせたジェイドは、答えを求めるように天を仰いだ。

しかし雲一つなかったはずの夜空にはいつしか雲が立ち込め、柔らかな光を放っていた満月をすっかり隠していた。

どんよりと濁った夜空は、まるでジェイドの心を映しているようだった。







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