音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
どことなく歯切れの悪いエマの返答に、セアラは不思議そうに首を傾げる。

しかし、エマの気まずそうな表情にすぐに気付いたセアラは、申し訳ない気持ちになり苦笑するしかなかった。

「もしかして、気を使わせちゃった…?」

「えっ!?…」

セアラのその言葉に、エマは驚いて目を見張る。

さっぱりとしていて、思ったことははっきりと口にする性格のエマが、今はどう答えればいいのか困っているように見えた。

「『万年二位』……」

「セアラ…」

セアラが小さく呟くと、エマは心配そうに眉尻を下げる。

「みんながわたしのこと影でそう呼んでるの知ってるし…でも全然気にしてないから大丈夫」

「わたしはそんなこと、まったく思ってないから!!」

セアラが言い終わるのも待たず、エマは食い気味に声を張り上げた。

怖いほどの真剣な眼差しに驚いたセアラに、興奮気味のエマはなおも続ける。

「みんなセアラに嫉妬してるだけだよ!
すごい才能があるのに、誰よりも努力してる。
先生達からも一目置かれてるし、それがうらやましくてやっかんでるだけ!」

「エマ……」

「この前のコンクールの演奏だって、すごかった!感動した!
わたしみたいにセアラに憧れてる子だって、た、たくさんいるんだから!
…だから、つまり…」
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