音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
だんだんと勢いあまって前のめりになっていたエマも、セアラに憧れているとはじめて打ち明けてしまった気恥ずかしさからか、言葉は急に尻すぼみになった。

「…ありがとう、エマ」

「…わたしは、本当のことを言っただけだよ」

「うん、でも、ありがとう」

少し気まずそうに頬を赤く染めている親友の必死の励ましが、セアラは素直に嬉しくてしかたなかった。



つい先日、セアラは自身の講師であるマチルダに勧められて出場したピアノコンクールで二位に入賞した。

観客の反応も良く、審査員の評価も高い。

それはセアラが今まで出場したほとんどのコンクールに共通して言えることだった。

確かに過去には納得のいく演奏ができなかったこともあったけれど、実力を出しきり、楽しんで演奏することを常に心がけている。

しかし、周囲の学生から噂されているように、セアラのコンクールでの成績はなぜかいつも二位ばかりだった。

その結果にすっかり落ち込み自信をなくしてしまったセアラは、ここ最近コンクールの挑戦を控えていた。

そんなセアラを見かねてか、マチルダになかば強制的に出場させられた今回のコンクール。

本番に向けてマチルダのレッスンもさらに熱が入り、いつにもましてかなりの準備をしたけれど、結果はやはり第二位。
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