音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
ルイスの言葉を遮るように、ジェイドは少し苛立ったような口調で言い放つ。

うんざりといった様子で眉をひそめ、手にしていた書類を机に放り出すと、革張りの椅子の背もたれに深く身体を預けた。

これ以上聞くつもりはない、という意思表示だった。

しかし、ルイスは下がることなく続ける。


｢申し訳ありませんがジェイド様、パーティー会場へお戻りください｣


その言葉にジェイドはさっと顔を上げると、怪訝そうな表情でルイスを見上げた。

いつもならこんな時、あっさり引き下がるのが常であり、ジェイドの行動に口出しをするような男ではない。

そして何かを感じ取ったのか、少し気まずそうにしている自分の側近に問う。


｢何かあったのか？｣

｢国王陛下がお呼びです｣


ルイスの返答に、不機嫌そうだったジェイドの眉間の皺はさらに深くなった。

そして少しの沈黙の後、仕方なしに席を立つ。

そのまま黙って隣を通り過ぎ出て行ってしまったジェイドの後に続くため、ルイスも静かにドアを閉めると部屋を後にするのだった。
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