音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
「いやいや、国王陛下。
王太子殿下は陛下によく似ていらっしゃり、誠に聡明なお方。
近年ジェイド様が隣国と結んだ条約により貿易産業もさらに発展しておりますし、このオスティアの未来も安泰ですよ」

そう言いながら豊かなお腹を揺らして笑っている。

周りの貴族達も口々にジェイドへの賛辞を並べ、ハワードの機嫌を伺っていた。

「まぁ、もうよい。
ジェイド、パーティーの終わりにはアダムの演奏がある。
それまではダンスなど楽しんではどうだ」

自慢の息子への評価に満足げなハワードのその言葉に「それは素晴らしい!」「楽しみですわ」とまたしても貴族達は盛り上がる。


「わかりました」


ジェイドは感情の読めない表情で返事をすると、気付かれないように小さく溜息を吐いた。

正直、音楽鑑賞もダンスも気分じゃないなどとは思っていても口にはしない。

「芸術を愛する国」と呼ばれ、特に音楽という文化はオスティアの歴史と深く結びついている。
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