紅蓮の鬼





「犬升麻!」


唐突に淋が叫んだ。


「お前は出て来なくていい!!!こいつはワタシひとりで――っ!!?」


淋の声が途切れた。


彼女に何かあったのかと思って、俺は隠れずに二人と向き合う。


「竜胆!!?」


彼女は体の支えを失ったのだろう。


花桂樹が左手で淋を支えていた。


「へぇ…今ごろ効くんだ?」


彼はクスリと嫌な笑みを浮かべた。


にしても、淋との距離がやけに近い。


――…絶対わざとだ


密かに沸き上がるイライラ。


……イライラ…。


いやいや、待て待て。


なんで俺がイライラしてんだよ。


俺は自問する。


けど。


だぁぁぁあもー、今は淋だ!!!


と、現実に向き合わせる。







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