紅蓮の鬼





とは言ったものの、実は淋の心配をするほどの余裕はない。


視界が霞んでよく見えない。


――畜生。


俺がこんな状況じゃないのなら、今すぐにでも淋を助けられるのに。


「なにって、昼に飲んだお茶」


花桂樹が余裕な笑みを浮かべる。


――昼に飲んだお茶?


俺がだんご食ってた時に、淋が飲んでたお茶のことだろうか。


「あの中に赤白を入れただけだよ」


花桂樹はクスリと笑う。


「…せ…き、はく」


確か赤白と言うのは、熱が出ている時の身体状態を意図的に引き起こす藥だ。


その名前をした薬は向こうにもある。


過剰に摂取すると、体温が上昇し続ける為に体の内側から焼きつくされる、という危険な薬だ。


「なに――」


『何やってんだ!』と言うつもりだった。






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