紅蓮の鬼



*****



風が、吹いている。


少しひんやりとした風だ。


目を開けて、まず視界に入ったのは、見たことのある景色だった。


――ここは……




『起きてるー?』


隣から、ムスッとしたような声がした。


嗚呼、この声は――


『木の上で寝たら風邪ひくよ』


彼が私の肩をひいて、目が合うようにさせる。


『あ、起きてた』


キョトンとした藺草さんだった。








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