紅蓮の鬼






『そういえば淋、』


彼が思い出したように私を呼んだ。


『君の字は〝淋しい〟の漢字』


彼は唐突に漢字の話をし始めた。


『だから嫌いだって言ったんだよね』


『…どんだけ昔の話をしているんですか』


その話をしたのは、彼と出会って間もない頃だ。


私は可笑しくて、クスッと笑った。







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