紅蓮の鬼
「なぁ、」
楓太がワタシの体を起こした後、遠慮気味に言った。
ワタシは彼に目を向ける。
「『いかないで』って何?」
「は?」
冗談を言っている目ではなかった。
「いや…別に言いたくないんなら言わないでいいけど」
楓太はワタシと視線を外す。
「違う。話が見えない」
ワタシは眉間にシワを寄せる。
しかし、彼はなんとも苦そうな顔をした。
「寝言が気になったんじゃないの?」
ガラッと障子が開いて、三つの湯飲みが置かれているおぼんを持って空木が入ってくる。
「……寝言…?」
ワタシは再び楓太に目を向ける。
「……あー…やっぱ何でもない!!!」
彼は空笑いをした。
「何でもない!!!忘れて!!!ごめん俺、変なこと聞いた!!!」
そう言って楓太はこの部屋から出ていってしまった。