紅蓮の鬼
...side淋
そしてワタシ達が身支度をすませた後、千秋が「あの、」と、何か物言いたげな顔をした。
獣鬼の話だろう。
ワタシは千秋の顔を見て思った。
昨日も言っていたが、不思議なことに途中から記憶がない。
「あ、獣鬼の話?」
楓太が思い出したように聞くと、千秋は頷いた。
すると彼は、木の下に胡坐をかいて、目を閉じた。
眉間にシワが寄っていた。
「…ん」
暫くその状態が続いた後、彼が目を開けて手を握ったり開いたりした。
「……お」
彼はうれしそうに顔をほころばせた。
人格が獣鬼と入れ替わったのだろう。