紅蓮の鬼

...side淋





そしてワタシ達が身支度をすませた後、千秋が「あの、」と、何か物言いたげな顔をした。


獣鬼の話だろう。


ワタシは千秋の顔を見て思った。


昨日も言っていたが、不思議なことに途中から記憶がない。


「あ、獣鬼の話?」


楓太が思い出したように聞くと、千秋は頷いた。


すると彼は、木の下に胡坐をかいて、目を閉じた。


眉間にシワが寄っていた。


「…ん」


暫くその状態が続いた後、彼が目を開けて手を握ったり開いたりした。


「……お」


彼はうれしそうに顔をほころばせた。


人格が獣鬼と入れ替わったのだろう。





< 340 / 656 >

この作品をシェア

pagetop