紅蓮の鬼





楓太が『え、なんで寿命?』とでも言いたげな顔をワタシに向ける。


ワタシは『後で教える』という意味で、手で制した。


「オレは獣鬼の理性の部分なのサ」


唐突に、ヤナセが口を開いた。


「昨日のことと殺石岩であったことは、獣鬼の本能がやったことなのサ」


「…あぁ」


「千秋の精神世界の中で、暴れ出した獣鬼の本能を抑えるのは、オレと千秋の二人でやっとこさできることなのサ」


――…なるほど


千秋の精神世界には、千秋自身と獣鬼の理性であるヤナセ、そして獣鬼の本能がいるらしい。


ふと、楓太を見ると『何が言いたいんだ?』とでも言いたげな顔をしていた。


いつもなら普通に割って入るのに、そうしない理由は、無意識のうちに『自分が口をはさむことじゃない』と感じているからだろう。


「つまり、ヤナセはこれ以上獣鬼の力を使うな、と言いたいんだな」


「その通りなのサ」


ヤナセは首を竦めた。






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