紅蓮の鬼




「家族に会いたい」


色緋に向かっている途中、川のほとりで休んでいる時。


淋が水面を見てポツリと言った。


「……家族いたんだ…」


淋の発言を聞いた俺は本音を溢す。


てっきり俺は、淋は一人っ子で両親は他界しているのだと思っていた。


「お二人は家族ではないのですか?」


キョトンとした表情で桔梗が俺と淋を見る。


彼と最初に会った時から俺らが一緒にいるから、家族だと思ったらしい。


「こいつはワタシの連れだ」


淋が俺と夫婦っていう設定をぶっ飛ばして言った。


――え、設定いつ無くなった!!?


あ、もしかして、淋が里を追い出された時点でこういう設定無くなってた!!?


いやでも、黄鬼にいた時はそんな話してなかったし。


「……………」


俺は一人、うんうん唸る。


――まさか、梔子サンに言い忘れてたとか?


………まぁ、いいや。


桔梗がいる前で話して、事が大きくなるのも嫌だし。


「………………」


「………………」


「………………」


それから続く、沈黙。





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