紅蓮の鬼
「生まれなかった方が良かったのかな…」
見たことがある景色が目に入り始めた時、桔梗が言った。
親に捨てられたのだ、と思っているらしい。
「んなわきゃねーだろ」
勝手に口が、動く。
ハッと、気づいた時にはもう時すでに遅しってやつで。
淋と桔梗が俺を見ていた。
――ヤバイ
頭が真っ白になった。
嫌な汗が背中を伝っていく。
「本当に生まれてほしくないのなら、中絶する手もあるし」
言葉がスラスラと出ていく。
「生まれた後すぐに殺すっていう手もある」
まるで俺じゃない誰かが、俺の体に乗り移って言っているようだ。
「……はい…」
桔梗は眉を下げて少し微笑んだ。
「…………」
チラリと淋を見ると、彼女の口角が上がっていた。
そして、口が動く。
―――馬鹿、と。
「…………」
(´・ω・`)