紅蓮の鬼
...side淋
支柱鬼で集まって(といってもワタシを含め四人しかいないが)会議をする場合へと、ワタシが一人で歩いている時だった。
「オス、竜胆」
陽気な声が後ろから聞こえた。
振り返ると、175cmくらいで千歳緑の着物に黒い羽織を着た男が此方に歩いてきていた。
ワタシと同じ支柱鬼の一人。
魚鬼の水陰(みかげ)だ。
彼の褐返の髪は、頭の半分から上はツンツンとして立っているのに、半分から下は徐々に長くなり、うなじあたりから生えている髪は肩甲骨あたりまである。
そんな彼の後ろ髪が靡いていた。
彼は昔、顔の右側の額から顎のあたりまでを縱一直線に斬られたらしい。
その為、右目は閉じてあって、傷痕もある。
治っている筈なのに、相変わらず開ける気がないようだ。
「水陰」
ワタシが彼の本名じゃないものの、名を言うと、彼は手を振った。
指と指の付け根あたりから蹼が見えた。
月明かりが水陰を照らす。
彼は相変わらず人型になるのが苦手らしい。
耳の形がおかしいし、所々に鱗が浮き出ていた。