紅蓮の鬼
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「このままじゃ本当に――」
鳥鬼の飛屋久(ヒヤク)が話している最中、何かに気づいたように言葉を切った。
そして遠くを見て、鎖骨を越すくらいの白く長い前髪と横髪を耳にかける。
どうやら耳をすませているようだ。
ここにいる誰もが怪訝そうに彼を見る。
「…………………」
飛屋久は眉を顰めた。
「声がする。ざっと十くらい」
鳥鬼は耳がいい。
耳をすませば五キロくらいは優に聞こえるだろう。
「十?」
水陰が眉間にシワを寄せた。
使いにしては多すぎるのだ。
それに、動物たちがここに向かってきているのだとしても、数が少なすぎる。
「……………………」
ある仮説が頭に浮かんだワタシは、それを確かめてみる為に外に出てみる。
ザァア…と風が匂いを運んだ。
――やはり
「思った通りだ」
ワタシは、ふっ、と口角を上げる。
「え?」
水陰がキョトンとした表情を見せた。
学校と呼ばれる場所で幾度とも嗅いだことのある匂い。
「これは人間だ」
そしてワタシは苦い表情を浮かべた。