紅蓮の鬼



「何故ここに人間が…」


獣鬼の槐(えんじゅ)が顔をしかめた。


彼がそんな顔をするのも無理ない。


何せここは深い樹海の中なのだ。


ここに来る途中に、遭難したと思われる人間の骨らしきものがあったくらいだ。


仮に遭難したとしても、何故ここに辿り着く?


深い樹海の為か、ここは登山の道にもなっていない。


それなのに人間がわざわざここに来るとは、一体どういうことだろう。


「キキッ」


声がした方を見ると、槐の肩に栗鼠がいた。


「……そうか、ご苦労だったな」


栗鼠が、ワタシの側を通って外へ出ていく。


「十三人」


彼は苦い顔をして言った。


「人間がいるらしい」




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