紅蓮の鬼



「!」


突如ワタシに降り注ぐ、雨のような殺気。


〝時すでに遅し〟


その言葉は、きっと今の状態を言うのだろう。


-----タタァ-ンッッ


振り返ったのとほぼ同時に、左肩と右腿に激痛が走る。


理解する時間など、無かった。


「ッッ」


フラつくことさえも許さず、背の方から何かがワタシを貫く。


ワタシの体を貫いた刀身が、ワタシの血の色で赤黒かった。


――くそ


「は…ッッ」


息が上手く吸えない。


それに続いて、別の場所から背と正面に先ほどと同じような物が、ドスドスとワタシを貫く。


ザザッという音が聞こえて、人間がワタシを取り囲むような音がした。


「ぐ…」


体に刃物が突き刺さっている為、動きにくい。


少しでも動く度に、銃のような物で撃たれた左肩と右腿、それと刃物で左脇腹と右肩、鳩尾あたりから血が流れ出す。


口の中は血の味がした。


顔を上げると、一人の男がワタシを冷たい目で見ている。




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