紅蓮の鬼
後ろから息遣いが聞こえる。
「…なんの、用だ……」
口を開くと、血が溢れ出て首筋へ伝っていく。
汗が滲み出てきた。
ここで匂うのは、ワタシの血の匂いだけ。
目の前の男は足音を立てながら、ワタシに近づく。
風が吹き、月を覆っていた雲が払いのけられた。
月光が、目の前にいる男を照らしている。
「別に?」
彼はそう言って口角を上げた。
「………………………」
彼の顔を見て、ワタシは顔をしかめた。
どこかで、見たことがある顔だったのだ。
「サンプルの採取……って言えば分かる?」
彼はそう言い、ワタシは眉を顰める。
――サンプル、だと…