紅蓮の鬼
「…な……」
瞬きが出来ない。
「けど、血はもう止まってた」
飛屋久の声が上手く聞き取れない。
耳に何かが被さっているような。
「槐?」
名前を呼ばれて、我に返る。
水陰が心配そうな顔をして、我を覗き込んでいた。
彼の額には汗が浮き出ていた。
彼がここに居るということは、どうやら淋の手当ては終わったらしい。
水陰が竜胆のいる部屋を指す。
「入るなよ」
彼はいつになく、厳しい表情で言う。
「破傷風になったら元も子もない」