紅蓮の鬼



「その言葉は本当か?」


「「!」」


聞いたことのある、低い声だった。


「……なんでワザワザ嘘言わねぇとなんねーんだ」


水陰は作業を続けながら、ハッと鼻で笑う。


「お前らの愚劣極まりない言動と一緒にすんなよ、人間」


ポタリと、水陰の汗がワタシの左腕に落ちた。


どうやら水陰の言い方がお気に召さなかったらしい。


男は息を吐いて、「殺れ」とだけ短く、あの時と同じように言った。


ザザザっと人間たちがワタシと水陰を囲む音がした。





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