紅蓮の鬼
...side楓太
「……そう…た…?」
傷だらけの淋が目の前にいる。
何故ここにお前が?
そう言いたげな顔をしていた。
――全然変わってない
けど俺の目の前にいる淋は、俺の知っている淋じゃなくて、痛々しい傷でボロボロになっている女にしか見えなかった。
そして彼女の傍には知らない男が。
黒い羽織を着ているってことは、淋と同じ支柱鬼なんだろうか。
空木は羽織ってなかったし。
「……ちょっとお水、こっちで女作ってたの?しかも可愛い子」
ポーン姉さんが俺に耳打ちする。
男が淋をお姫様抱っこした。
「お姫様抱っこなんて妬けるわ」
ハンカチを取りだし、それをムキーっと怒り任せにして引っ張る。
「お水もやって!!!あんた男でしょっ」
「いや、あんたも男だろ!!?」
そんなやり取りをしている間に、男が歩いていく。
淋と目が合った時、「ついてこい」と言っているようだった。
「……………………」
彼の長く鋭い爪が目に入った。