紅蓮の鬼
「さっきのことは、淋が自分で選んだのに、淋がその場所に行く」
別におかしいとは思わない。
淋の部下があんな状態なら、彼女のプライドが傷つくと思うし。
なにより、仲間を大切にする淋にとって、きっとそれを聞いて居ても立ってもいられないと思うし。
「助ける側としてはいいかもしれないけど、助けられる側としてはこの上ない屈辱的なことなんだよ」
「…………………」
――分かんねぇ
俺には、鬼の生き方が分かんねぇ。
プライドって命より大事なもんかよ。
空木は俺を見て苦笑する。
「助けた時点で、彼らには力がないと言っているようなものだから」
そう言って、空木はまた悲しそうな顔をした。
それから暫く続く、沈黙。
「けどさ、」
その沈黙を破ったのは俺だった。
「ん?」
俺を見た空木の眉は八の字になっていた。
「………なんでもない」
「…そう……」
空木は目を落とした。
「………………」
「けど、淋が行っても要は死んでんじゃん」
俺はその言葉を飲み込んだ。