紅蓮の鬼


私たちが住んでいる家に、人が来た気配がした。


何事だろうと思って表へ出てみると、武装をした三人の人間がいた。


だけど、ここからは見えない場所から、ざっと十人くらいの人間の気配がする。


『何故…貴方たちがここに……』


私は驚きを隠せなかった。


だってここは、山と山の間にある場所で、人里とも離れているからだ。


『鬼はいるか?』


『え!!?ちょ、何をっ!!?』


彼らはずかずかと土足で家の中に入っていく。


無作法にも程がある。


人間たちは私のことなど眼中にないようで、勝手に部屋を荒し、〝鬼〟を探す。


『何の騒ぎ?俺もうちょっと寝たいんだけど』


障子を開けて、寝間着姿で寝惚け眼の藺草さんが言った。


『………………………………』


ここにいる人間全員がピタリと動きを止め、キョトンとした表情を見せる。


『?』


藺草さんは人間に見られ、頭の上に疑問符をのせた。


『………………………………』


一瞬、張りつめた空気が緩んだ気がした。




< 529 / 656 >

この作品をシェア

pagetop